老老介護（Elderly caring for the elderly）

老々介護とは？

この風刺画について

この風刺画は、日本をはじめとする超高齢社会で深刻化している「老老介護」の実態をAIで描いたものです。
「老老介護」とは、高齢者同士が介護をし合う状態を指します。
本来であれば介護を受けるべき側にある高齢者が、同じく高齢の家族を支える立場に追いやられているという、現代社会の構造的課題を視覚的に表現しています。

このテーマを選んだのは、新聞やニュースで「老老介護による心中」や「介護疲れによる事件」が報じられるたびに、社会全体が見て見ぬふりをしているのではないかという違和感を感じたからです。
そこで私は、「重くなりすぎず、それでいて本質を突く表現」を目指し、温かみのあるイラスト調のタッチを用いてこの風刺画を制作しました。

TOPは3つで構成されています。
どの場面でも、介護者も被介護者もともに高齢者です。
そして彼らはどこか優しく微笑んでいますが、その背後にある“疲労感”や“制度の限界”を、見る人が自然と感じ取れるよう意図しています。
最初の場面では、車椅子の高齢者を支えるさらに年上の介護者。
次は点滴を受ける女性に寄り添う男性。
最後は食事を差し出す老人。
いずれも介護のリアルを簡潔に象徴しています。

この風刺画を通じて、「家族だから仕方ない」という無言の圧力や、「公的支援の不十分さ」に疑問を持ってもらいたいと願っています。
また、これを見た若年層や働き世代にも、「将来の自分の姿」としてリアルに感じてもらうきっかけになればと考えています。

風刺画のポイント

この風刺画を描く際に最も重視したのは、「優しさの裏にある深刻な現実」をどう表現するかという点でした。
老老介護の現場には、決してドラマチックではないけれど、日常の中にひそむ“悲しみ”や“切実さ”が存在します。
それを直接的な悲壮感ではなく、「温かい絵柄」の中にさりげなく埋め込むことをテーマにしました。

まず、キャラクターの表情に注目してください。
全員が穏やかな笑顔を浮かべていますが、目元や口元には微妙な疲れや不安を感じさせる描写を施しています。
これは、介護者自身が「まだ自分は大丈夫」と無理をしている心理状態を表しています。
また、背景をあえて無地に近くすることで、「今にも崩れそうな日常の不安定さ」や「社会の無関心さ」を象徴的に示しました。

介護用品の小道具にも注目しています。
点滴スタンドやおむつ用バスケット、介護食のトレイなど、細かなアイテムを丁寧に描くことで、単なる抽象画ではなく“リアル”な場面として受け取ってもらえるよう工夫しました。
特に3枚目の食事シーンでは、「一見ほのぼのとした光景」の中に、「すでに介護者も介護される側に近づいている」というアイロニーを込めています。

さらに、色彩にも明確な意図があります。
全体的に温かみのある色合いを使いながらも、背景や衣服にはグレイッシュなトーンを混ぜ、どこか老朽化や疲弊感を醸し出しています。
これは、介護者も高齢であるという“年齢的限界”を視覚的に伝えるための工夫です。

そして、画面全体に共通して描いたのは「愛情の表現」です。
この作品は単に制度や社会を批判するものではありません。
むしろ、介護の現場にある“人間的な愛情”や“献身”をしっかり描きながら、その限界や危うさを伝えることに重点を置きました。

老老介護という現実を見つめることは、社会にとっても個人にとっても必要不可欠です。
この風刺画は、問題提起であると同時に、「誰かを思いやる気持ち」がどれだけ尊く、同時に支援されるべきものかを可視化するためのメッセージでもあります。
一見やさしいタッチの中に込めたこの問題提起が、観る人の心に静かに届くことを願っています。

AIが描いた「老老介護」